七色珊瑚町商店街

カメタクシーを降りた私は、なじみの店へ向かった。商店街の端にあるそのカフェは年代物の難破船をリフォームしたものだった。水面から差し込む光が、忘れかけていた冒険心をくすぐる。店内の客はまばらだった。私が座った席の斜向いでは、飲み物を片手に人魚の女の子が手紙を書いている。陸用郵便のボトルが置かれているのを見ると、どうやら、陸上の想い人にでも手紙を書いているのだろうか。さしずめ現代版人魚姫かな、なんてことを考えていたらマスターがしっぽをひらめかせつつ注文を取りに来た。
「ようこそ、七色珊瑚町商店街へ。いつものかい?」